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多発交通外傷

太田西ノ内病院 麻酔科

 交通事故が世の中にどれだけ悪影響を及ぼしているのだろう。 交通事故による死亡は警察の発表によると年間約一万人弱である。しかし、それは事故発生から24時間以内で亡くなった人の数で、実際に交通事故が原因で亡くなった人間の数はその数倍にのぼるはずである。日本人の死亡原因の第一位は悪性新生物、第二位心疾患、第三位脳血管障害となっているが、統計を交通事故を含めた外傷として処理すると外傷は死因の第二位となる。WHOの予測によると西暦2020年の世界の死因の第一位はAIDSを含めた感染症で、第二位が交通事故になるとのことである。経済的点から考えると、日本の15歳から59歳の生産年齢人口の平成11年度医療費で一番多かった原因は外傷である。あの軍事大国のアメリカの国防費は国民総生産の約3〜4%と言われているが、外傷がアメリカ社会に与える影響は約7〜8%との事である。つまり交通事故で亡くなる人数を減少させ社会復帰率を向上させることは21世紀にとって重要な課題となっている。
 交通事故の特徴について内容別に考えてみると

1.運転手
 1)ハンドル損傷:心タンポナーデ、膵臓損傷
 2)シートベルト損傷:消化管損傷、腰椎損傷、肺挫傷、気管損傷、心・大血管損傷
 3)フロントガラス損傷:顔面多発切創
 4)ダッシュボード損傷:膝損傷、股関節後方脱臼
 5)ムチ打ち損傷
 
2.同乗者
 運転手にほぼ同じでダッシュボードでは胸部損傷がある。
 
3.バイク運転手
 頭部外傷、四肢骨折
 
4.歩行者
 1)下腿骨折(バンパー骨折)
 2)車にすくい上げられて体幹損傷
 3)投げ出されて頭部外傷

 以上の点が特に重要である。新聞の死亡事故の記事で、たまに『外傷性ショック』による死亡などと書かれている死因のはっきりしない病名を見かけることがあるが、こんな時、一体この方の本当の死因は何なのか?あるいはきちんと治療を受けられたのかと心配になってしまう。とにかく交通事故の場合最初の診察が重要であるのは言うまでもなく、我々も見落としがないよういつも心がけている。車に乗る方も是非シートベルトの着用を!それで、もしかしたら運命が変わるかも知れません。

 
 

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