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ミュンヒハウゼン症候群

太田西ノ内病院 精神科

 1951年、Asher,R.は色々な急性症状を訴えては転々として病院に入退院を繰り返し、しかもその症状や生活史に多くの虚偽が含まれ、その結果、治療者を振り回す3例の症例を報告した。そして、これらの症例をドイツの貴族でほら吹き男爵とも呼ばれるミュンヒハウゼン男爵にちなんでミュンヒハウゼン症候群と名付けた。
 日本でも症例の報告がされており、その中には例えば、結核の疑いで入院中に自らのたんの中に培養した結核菌を入れたり、あるいは縫い針6本を飲み込むなどの異常な行動が認められている。この他、塩酸や硫酸を皮下注射する、尿に血液や糖を混入する、歯肉を傷付け出血させるなどの症例も報告されている。このようにして病気を装いその結果、頻回の入退院を繰り返しさらに外科手術を何度も受けることになる。これらの行動の動機としては周囲からの興味や関心の中心でありたいという欲求や医師や病院への悪意などが想定され、その多くの例で人格の未成熟などが指摘されている。また、最近では親が子供を人工的に操作して症状を作りだし医療機関を受診するという言わば身代わりミュンヒハウゼン症候群も注目されている。対応は非常に困難ではあるが、その問題行動の背景にある心理的葛藤に配慮することや、さらに、医療者として大事なのはこの症候群の可能性が考えられるとしても本当の身体疾患を見逃さないという点である。

 

 
 

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