インフルエンザは流行性疾患であり、一旦流行が始まると、短期間に多くの人へ感染が広がります。日本では例年12月〜3月に流行しますが、今シーズンは各地ですでに流行が始まっております。
厚生労働省「今冬のインフルエンザ総合対策について(平成19年度)」を参考に、インフルエンザの基礎知識、予防策などをまとめましたのでご活用ください。
     
     
      
     

     
    
    
@インフルエンザと普通の風邪との違い
インフルエンザと“かぜ”(普通感冒)とは、原因となるウイルスの種類が異なり、通常の“かぜ”(普通感冒)はのどや鼻に症状が現れるのに対し、インフルエンザは急に38〜40度の高熱がでるのが特徴です。
さらに、倦怠感、筋肉痛、関節痛などの全身症状も強く、これらの激しい症状は通常5日間ほど続きます。
また、気管支炎や肺炎を併発しやすく、重症化すると脳炎や心不全を起こすこともあり、体力のない高齢者や乳幼児などは命にかかわることもあります。
    
 ◇インフルエンザと”かぜ”(普通感冒)のちがい◇
インフルエンザ かぜ
初発症状 発熱、悪寒、頭痛 鼻咽頭の乾燥感およびくしゃみ
主な症状 発熱、筋痛、関節痛 鼻汁、鼻閉
悪寒 高度 軽度、きわめて短期
熱および熱型
(期間)
38〜40度
(3日〜4日)
ないか、もしくは微熱
全身痛、筋肉痛、関節痛 高度 ない
倦怠感 高度 ほとんどない
鼻汁、鼻閉 後期より著しい 初期より著しい
咽頭 充血およびときに扁桃腫張 やや充血
結膜 充血 アデノではある。
咽頭結膜熱では特にひどい。
合併症 気管支炎、インフルエンザ肺炎、
細菌性脳炎、脳症
まれ
病原 インフルエンザウイルスA、B ライノウイルス
アデノウイルス
コロナウイルス
RSウイルス
パラインフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスC
退速診断法 あり 一部のウイルスで『あり』
     
     
Aインフルエンザの型
インフルエンザウイルスはA型、B型、C型の3つに大きく分けて分類され、毎年流行を繰り返すごとに変異株がでています。特にA型は多くの変異株があり、世界的な大流行を引き起こします。B型も流行がありますが、C型は軽症のことが多いのです。
インフルエンザA型ウイルスは渡り鳥などによって地球規模で運ばれており、どの型が流行かという予測は、地球規模の動向を解析して行われます。
    
      
Bインフルエンザの流行期
日本ではインフルエンザは12〜3月に流行します。これは、温度が低く乾燥した冬には、空気中に漂っているウイルスが長生きできるからです。 
また、乾燥した冷たい空気で私たちののどや鼻の粘膜が弱っています。年末年始の人の移動で ウイルスが全国的に広がるのもひとつの原因だと言われており、これらの原因が重なって流行しやすい時期となっています。
     
      
Cインフルエンザの感染様式
インフルエンザウイルスは患者のくしゃみや咳、痰などで吐き出される微粒子(飛沫) が他の人の呼吸器に吸い込まれる「飛沫感染」が中心です。また,くしゃみや咳、痰などで吐き出される微粒子(飛沫)が手や環境に付着し、それらに触れた手から、鼻や咽頭へと移っていく「接触感染」も感染経路に挙げられます。
     
     
Dインフルエンザが引き起こす合併症
インフルエンザにかかると合併症を引き起こす恐れがあります。合併症の種類は様々で中には死に至る重大な合併症もあります。
      
     
Eハイリスク群をご存知ですか?
ハイリスク群とは,インフルエンザに感染すると、重症化や合併症を引き起こす可能性の高いグループのことで下記の方が当てはまります。
ハイリスク群に当てはまる人は、日ごろから予防を心がけるだけでなく、重症化を防ぐためにも医師と相談のうえワクチンを接種することが望ましいと考えられます。(ハイリスク群に限り、予防として承認された抗インフルエンザ薬があります。)
また、ハイリスク群の方本人だけでなく、ご家族や周囲の方もワクチン接種を含む予防とインフルエンザにかかったら早めの処置をすることが大切です。
     
      
F年齢によるインフルエンザの影響
日本におけるインフルエンザの流行・拡大は、小学校で始まると考えられています。 小学生は罹患(りかん)率が高く、それが家庭で成人や高齢者に感染していきます。
高齢者は,罹患率は低いのですが逆に死亡率は高くなっています.そのためインフルエンザは高齢者にとって「老人の最期の生命のともしびを消す疾患」とも言われています。
    
    
     
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@ワクチンによる予防
最も確実な予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることです。
特に、ハイリスク群(高齢者や心臓や肺に慢性の病気を持つ人など)、気管支喘息を持つ小児などは、重症化を防ぐためにも医師と相談の上、早めに接種することが望ましいと考えられます。
     
ワクチン接種のタイムスケジュール
インフルエンザワクチンは接種してから実際に効果を発揮するまでに約2週間かかります。ワクチンには2回接種と1回接種(中学生以上は1回でもよい)があり、2回接種する場合,2回目は1回目から1〜4週間あけて接種します。
インフルエンザの流行は12月から3月が中心であること、ワクチン接種による効果が出現するまでに2週間程度を要することから、毎年11月中旬までにワクチン接種を終えておくとより効果的です。また、流行してからの接種は、抗体価が十分上がる前に感染する危険性がありますが、抗体価が上昇していれば症状が軽くなります。
      
     
インフルエンザワクチンによる有効な防御免疫の持続期間は3カ月程度と短いので、毎年シーズン前に接種を繰り返す必要があります。
      
インフルエンザワクチンは地域の医療機関、かかりつけ医などで接種を受けることが出来ますが、自治体によって期間や費用は異なります。
インフルエンザワクチン接種可能な医療機関や地域での取り組みについては、地域の保健所、医師会、医療機関、かかりつけ医などに問い合わせてください。
      
     
ワクチンについてよくある質問
Q. ワクチンの免疫は型が合わないと効果がないの? 
A. Aソ連型(H1N1)、A香港型(H3N2)、B型の3種類の混合ワクチンですので、新型ウイルスが出現しなければこのうちどの型が流行しても効果があります。
しかし、 ウイルスの突然変異があるので効果が低下する可能性がありますが、近年は予測技術も高まって、実際の流行とはほぼ一致しています。 
     
Q. ワクチンを打ったのに“かぜ”をひいたのはなぜ? 
A. インフルエンザのワクチンは普通の”かぜ”(普通感冒)に効果はありません。
しかし、ワクチンは健康な成人のインフルエンザに対する発症予防効果は70〜90%と高い効果が認められています。また、ワクチン接種は高齢者の死亡の危険を約80%減らすなど、 重症化を防止する効果もあります。 
    
     
A日常生活でできる予防方法
十分な休養と栄養摂取
体力をつけ、抵抗力を高めることで感染しにくくなります。からだの抵抗力を高めるために十分な休養と栄養を日ごろから心がけましょう。
適度な湿度の保持
ウイルスは低温、低湿を好み、乾燥しているとウイルスが長時間空気中を漂っています。空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。
特に乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、十分な湿度(50−60%)を保つようにしましょう。
手洗い、うがい
手洗いは,接触により手指に付着したインフルエンザウイルスを除去し予防効果を高める方法です。
うがいは咽頭粘膜の乾燥を防ぎます. 
外出後などに手洗い,うがいを行う習慣をもちましょう.
人混みや繁華街への外出を控える
インフルエンザが流行してきたら、特に高齢者や慢性疾患を持っている人、疲労気味、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控え病原体であるウイルスを寄せ付けないようにしましょう。
外出時のマスク着用
どうしても予防が必要な方はマスクを着用しましょう。
インフルエンザに罹っている人がマスクを着用することは、咳やくしゃみの飛沫で他人へ感染することを防ぐ効果もあります。『人に対して』という意味で『エチケットマスク』などといわれることもあります。
     
     
     
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どの病気でも共通して言えることですが、早めに治療し、体を休めることは、自分のからだを守るだけでなく、他の人にインフルエンザをうつさないという意味でも大変重要なことです。インフルエンザの症状がでたら、早めに医師の診断を受けるようにしましょう。
普段健康な成人は、軽症のうちに会社や学校を休むわけにはいかないという気持ちと重なって、高熱で苦しくなるまで病院に行かないという考えが一般的です。
ウイルスがのどや鼻の粘膜に広がり高熱が出てしまうと、根本的な治療は間に合わなくなり、かえって長期間、寝込むことになってしまうおそれがあります。
     
      
      

           
     
      
インフルエンザには栄養をとって休むといった自家療法も必要です。
しかし、危険な症状を軽視していたり、自己判断で危険な薬、効かない薬を飲んでいる人も少なくありませんので注意してください。
     
@こどもにアスピリンを含有した解熱剤やかぜ薬を服用させる
小児が服用すると「ライ症候群(急性脳症の一種で重篤な病気)になる危険性があります。他にも解熱剤で急な体温の低下や血圧の低下を引き起こすケースもありますので、医師に相談し、小児用のおだやかな解熱剤やかぜ薬を使用してください。 
      
     
A子供が突然吐いたが、寝かせておいた
乳幼児がお茶やジュースなどの水分をとったあとすぐに吐いて元気がなくなった、けいれんを起こしたなどのときは、すぐに受診してください。脳炎、脳症の合併症の可能性を考える必要があります。 
    
    
B以前に病院でもらった抗生物質を飲む
抗生物質は細菌に効果のある薬でウイルスには効きません。 
       
     
C市販のかぜ薬を飲む
熱、咳、鼻水などの症状を抑えるものであり、インフルエンザに直接、 効くものではありません。 
     
     
D予防接種を受けたのでインフルエンザにはかからない?
予防接種を受けることでインフルエンザにかかりにくくなり、かかっても重くならなくなります。しかし、流行した型が違う場合など、 100%かからないわけではありませんから注意が必要です。
    
      
     
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@インフルエンザにかかってしまった場合
● 単なるかぜだと軽く考えずに、早めに医療機関を受診してアドバイスを受けましょう。 
● 安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。 
● 水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープなど飲みたいもので結構です。
● 咳エチケットを守りましょう
       
咳エチケットとは
咳やくしゃみの際にはティッシュなどで口と鼻を押さえ,周りのひとから顔をそむける
使用後のティッシュはすぐゴミ箱に捨てる
咳やくしゃみなどの症状がある人はマスクを正しく着用する
咳やくしゃみのときに口・鼻を押さえた手,鼻水や痰などをティッシュで拭いた手は,あちこち触る前にすぐに洗う
     
     
Aインフルエンザにかかった場合の外出を控える期間
一般的に、インフルエンザを発症してから3〜7日間はウイルスを排出する(排出期間の長さには個人差があります)と言われています。排泄されるウイルス量は解熱とともに減少していきます。
ウイルスを排出している間は、他の人へ感染させてしまう力をもっているといえます。咳などの症状が続いている場合には、咳やくしゃみをする際にはティッシュで口元を覆う、あるいはマスクをするなどの『咳エチケット』で周囲への配慮が望まれます。
      
参考までに、学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています(ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときはこの限りではありません)。
   
     
Bインフルエンザの治療薬
インフルエンザに対する治療薬としては、抗インフルエンザウイルス薬(リン酸オセルタミビル、ザナミビル水和物、塩酸アマンタジン)があります。ただし、その効果はインフルエンザの症状が出はじめてからの時間や病状により異なります.
正しい飲み方、飲んではいけない場合、副作用への注意などもありますので、医療機関できちんと説明を受けてください。また、使用する、しないは医師の判断となりますので、十分に医師に相談することが重要です。

抗インフルエンザウイルス薬を適切な時期(発症から48時間以内)から服用を開始すると、発熱期間は通常1〜2日間短縮され、ウイルス排泄量も減少します。
     
    
C抗生物質はインフルエンザに効果があるのか?
インフルエンザウイルス自体に抗生物質は効きません。
しかし高齢者や体の弱っている方はインフルエンザにかかることにより、細菌にも感染しやすくなっています。このため、細菌にも感染する(混合感染)ことによっておこる肺炎、気管支炎などの合併症に対する治療として、抗生物質が使用されることはあります。
    
     
Dインフルエンザにかかった人の部屋や衣類につて
インフルエンザにかかった人が部屋の中にいた場合、その人の咳やくしゃみ(飛沫)の中にインフルエンザウイルスがいる可能性がありますが、飛沫は1〜2メートル以上飛びませんし、マスクをしていれば飛沫の発生は最小限に抑えることができます。
手や指先を介した感染もありますので、手洗いは重要です。
狭くて換気の悪い部屋などでは、比較的長くウイルスが浮遊することもありますので(飛沫核感染)、時々空気の入れ換えをすることや、部屋の湿度を適度に保つことなどが大切です。
目に見えるような、痰(たん)やつば、くしゃみで飛んだ分泌物などによる汚れがある場合には、アルコールなどの市販されている消毒薬での拭き消毒をお勧めしますが,特に汚れがない場合は通常の掃除だけで十分だと考えられます。 
       
インフルエンザにかかっている時に着用した衣服には、ウイルスが付着していることが予想されますが、これから感染を起こすことはまれだと考えられています。通常の洗濯をして日なたに干す、あるいはアイロンをかけるなどしておけば、インフルエンザに限らず、多くのウイルスの感染性はなくなってしまいます。
     

      
     
     
厚生労働省ホームページ 感染症情報 インフルエンザ総合対策
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/index.html
国立感染症研究所感染症情報センターホームページ インフルエンザ
http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/index.html
      
      
      
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